大火事だ。親戚の家が燃えた。数十年ぶりの大火事だ。十一軒燃えた。本屋とおもちゃ屋と靴屋と酒屋と魚屋と商事屋と銀行と福屋と飲み屋と床屋と中古ゲーム屋が燃えたって。三人死んだ。一人は未成年だって。その子はスナックで働いてたんだって。まだ一人行方不明だって。友達の消防士は火を消しに行ったって。七時間以上燃え続けたって。

だからなんだ。
俺には関係ない。
家から五百メートル離れたところの火事だ。
俺の家は燃えていない。
俺は生きている。
熱くないし、痛くも無い。

だからなんだ。
貴様は、本屋で本を買い、親戚のおもちゃ屋には思い出がいっぱい、酒屋では酒を買っていただろう。
貴様の町の一番の繁華街だろう。
いろいろな思い出があるだろう?

だからなんだ。
寂れた町が綺麗になって良かったじゃねぇーか。
新しい建物が建って大工が儲かるじゃねぇーか。

だからなんだ。
そこはもう二度と現実に目の前に現れることの無い場所じゃないか。
おもちゃや、本が燃えてもったいなくないか?

もったいねぇ。